【音楽】サンパウロを歌った名曲・新旧ミックス10選
ブラジルの曲と言えば「イパネマの娘」などリオを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実はブラジル音楽で最も歌われている都市はサンパウロであり、その数は3,000曲にも上ると言われています。今回はその中から、新旧ミックスして10曲をご紹介します。
- Trem das Onze – Adoniram Barbosa
- Sampa – Caetano Veloso
- Lá Vou Eu – Rita Lee
- São, São Paulo – Tom Zé
- Sampa no Walkman – Engenheiros do Hawaii
- Fim de Semana no Parque - Racionais MC's
- Modão de Pinheiros – O Terno
- Não Existe Amor em SP – Criolo
- Samuel - Passo Torto
- Cidade Cinza – CPM 22
Trem das Onze – Adoniram Barbosa
サンパウロのサンバ界の重鎮、アドニラン・バルボーザの『11時の夜汽車』(トレン・ダス・オンゼ Trem das Onze = トレン ダス オンズィ と発音)。非常に有名な曲ですので、みなさんも一度は耳にしたことがあるでしょう。『ポルトガル語の本おすすめ5選【初級~上級まとめ】』の記事で紹介した本、“Falar... Ler... Escrever... Português: Um Curso Para Estrangeiros” でも取り上げられているので、歌詞を勉強した方も多いかもしれません。
この曲は、サンパウロ市北部に位置するJaçanã (ジャサナン地区)に言及しています。1964年の発表以来、今でも多くの人に愛されている、サンパウロを代表する一曲です。
- アーティスト: Grupo Peteleco
- 出版社/メーカー: Movieplay Digital
- 発売日: 2018/08/17
- メディア: MP3 ダウンロード
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Sampa – Caetano Veloso
バイーア出身の歌手、カエターノ・ヴェローゾの “Sampa”(サンパ)は、サンパウロを歌った曲の中で、おそらく最も有名で人気。2009年のブラジル版ローリング・ストーン誌による『ブラジル音楽100選』では42位にランクインしています。
歌詞にある「イピランガ大通りとサン・ジョアン大通りの交差点」は、サンパウロで最も有名な場所の一つとなりました。この曲が収録されたアルバム “Muito“(ムイト = ムイント と発音)は、日本でも高く評価されています。
- アーティスト: カエターノ・ヴェローゾ
- 出版社/メーカー: Universal Music International Ltda.
- 発売日: 2018/10/12
- メディア: MP3 ダウンロード
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- アーティスト: カエターノ・ヴェローゾ
- 出版社/メーカー: マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
- 発売日: 1999/01/20
- メディア: CD
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Lá Vou Eu – Rita Lee
ブラジリアンロック界の女王、ヒタ・リーの “Lá Vou Eu”(ラ ヴォウ エウ と発音)。1976 に発表されたこの曲は、TV Globoのドラマ “O Grito”の挿入歌にもなりました。
この曲が素晴らしいのは、40年以上経っても全く色あせない歌詞とメロディー。サンパウロに暮らす誰しもが、その光景と心情に自分を重ね合わせるだろうと思います。
「サンパウロのとあるアパート」に住む人ならなおさら。個人的にはこの10曲の中でナンバーワンに推したいです。
- アーティスト: ヒタ・リー
- 出版社/メーカー: Universal Music International Ltda.
- 発売日: 2016/01/15
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São, São Paulo – Tom Zé
カエターノ・ヴェローゾと同様、バイーア出身でトロピカリズモで知られるトン・ゼーの “São, São Paulo”(サン、サンパウロ = サォン、サォン パウロ と発音)。1968年、TV Record主催の『第4回ブラジル音楽祭』(IV Festival de Música Popular Brasileira)で第1位を獲得した曲です。サンパウロへの愛情と、同時に皮肉が込められた歌詞からは、当時の街の様子がうかがい知れます。
また、トン・ゼーは “Augusta, Angélica e Consolação” (アウグスタ、アンジェリカ イ コンソラサォン と発音)など、他にもサンパウロについての曲をリリースしています。
- アーティスト: トン・ゼー
- 出版社/メーカー: Pヴァイン・レコード
- 発売日: 2011/11/16
- メディア: CD
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Augusta, angélica e consolaç o
- アーティスト: トン・ゼー
- 出版社/メーカー: Warner Music Group - X5 Music Group
- 発売日: 2018/08/17
- メディア: MP3 ダウンロード
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Sampa no Walkman – Engenheiros do Hawaii
ポルトアレグレで1984年に結成されたバンド、Engenheiros do Hawaii (エンジェニェイロス・ド・アヴァイ)の “Sampa no Walkman”(サンパ ノ ウォークマン)。この曲は、ボーカルの Humberto Gessinger (ウンベルト・ゲッシンゲール)が、「ウォークマンでカエターノ・ヴェローゾの “Sampa” を聴いていた」ことに言及したものです。いわゆる「アンサーソング」のようなものですね。そのため、カエターノ・ヴェローゾの “Sampa” に出て来るフレーズがそのまま使われていたりします。
バイーア出身のカエターノ・ヴェローゾが見たサンパウロと、ポルトアレグレ出身のウンベルト・ゲッシンゲールが見たサンパウロ。「ウォークマンで “Sampa” を聴きながら」というフレーズに合わせて、比べてみてください。
- アーティスト: Engenheiros Do Hawaii
- 出版社/メーカー: RCA Records Label
- 発売日: 2009/06/15
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Fim de Semana no Parque - Racionais MC's
カリスマ的な人気を誇り、2008年のブラジル版ローリング・ストーン誌による『ブラジル音楽界100人の偉大なアーティスト』で28位にランクインのラッパー、Mano Brown(マノ・ブラウン)率いるサンパウロのラップグループ、Racionais MC's(ハスィオナイスMC's)の “Fim de Semana no Parque” (フィン ジ セマナ ノ パルキ と 発音)。
マノ・ブラウンは巧みな言葉選びのセンスやそのカリスマ性から「知識人」と称され、彼の歌詞や発言は、しばしば言語学者たちの研究対象にまでなっています。
ポルトガル語学習者は、「サンパウロ市郊外の貧困社会」を反映したこの曲の歌詞に、一度は触れてみることをおすすめします!
Modão de Pinheiros – O Terno
サンパウロで2009年に結成されたロックバンド、O Terno(オ・テルノ)の “Modão de Pinheiros”(モダォン ジ ピニェイロス)。この曲が収録されたバンド初のアルバム “66”(セッセンタ イ セイス)は、ブラジル版ローリング・ストーン誌による『2012年ブラジル音楽アルバムベスト25』中にランクインしています。彼らの音楽は、「現代ポップスと60’sロックを融合させたようだ」と言われているようです。
終始小気味よく韻を踏みながら、「サンパウロ市西部のピニェイロス地区」を巡っていく歌詞は圧巻。クリエイティビティとユーモアに富んだ一曲です。
Mod o de Pinheiros (Ou "é por Isso Que As Pessoas Mudam de Bairro")
- アーティスト: O Terno
- 出版社/メーカー: Tratore
- 発売日: 2012/07/13
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Não Existe Amor em SP – Criolo
2000年代半ばにサンパウロのアンダーグラウンド・シーンに登場した人気ラッパー、クリオーロの “Não Existe Amor em SP”(ナォン イズィスチ アモール エン エスィペ)。この曲は、MTVの『2011年ビデオミュージックブラジル』(Video Music Brasil)を獲得しました。
時代を見事に反映し、「天才的」と評されたこの曲は、壁や建物に囲まれたサンパウロという大都市に飲み込まれ、混沌、憂鬱、虚無感に襲われる市民の絶望が聞こえてくるようなメロディーと歌詞で構成されています。「SPに愛なんて存在しない」。じっくり聴いてみてください。
- アーティスト: Criolo
- 出版社/メーカー: Oloko Records
- 発売日: 2018/07/28
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Samuel - Passo Torto
サンパウロのミュージシャンたちで構成されるMPB(ブラジリアンポピュラーミュージック)グループ、Passo Torto(パッソ・トルト)の “Samuel”(サムエル = サムエウ、と発音)。グループは、2012年、ブラジルのグラミー賞にあたる『第23回ブラジル音楽賞』(Prêmio da Música Brasileira)で『最優秀MPBグループ賞』を、2014年『第25回ブラジル音楽賞』で『最優秀ポップス・ロック・レゲエ・ヒップホップ・ファンクグループ賞』を受賞しています。
“Samuel” は、郊外出身の一人の青年から見たサンパウロの様子を歌った曲。若者たちの共感を呼んでいるようです。
- アーティスト: Passo Torto
- 出版社/メーカー: YB Music
- 発売日: 2011/11/08
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Cidade Cinza – CPM 22
最後にご紹介する曲は、1995年にサンパウロ州バルエリ市で結成されたハードコアバンド、CPM 22(セペエミ・ヴィンチ・イ・ドイス)の “Cidade Cinza”(スィダージ スィンザ)。バンドは、この曲が収録されたアルバム “Cidade Cinza” で、2008年『ラテン・グラミー賞』(Latin Grammy Awards)の『最優秀ブラジリアンロックアルバム賞』を受賞、新世代のブラジリアンバンドたちの先駆けとなりました。
バンドのメンバー自身が、アルバム “Cidade Cinza” について「サンパウロの現状への風刺」であると語っており、世間にはそのサウンドは NOFX や Lagwagon、Bad Religion を彷彿とさせる、と言われています。2007年にリリースされた曲ですが、「今でも全く古びていない」と支持されている曲です。
- アーティスト: CPM 22
- 出版社/メーカー: Universal Music International Ltda.
- 発売日: 2040/01/01
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以上、サンパウロがテーマの名曲10選をご紹介しました。ジャンルや詞の内容、時代背景が全く異なる10曲ですが、それぞれの音楽家の視点で描かれたサンパウロが楽しめると思います。